その他の担保権(3)…譲渡担保

最後に、「譲渡担保(じょうとたんぽ)」という担保権について説明します。譲渡担保というのは、抵当権など登記や登録を必要とする権利や、質権など物の引渡を必要とする権利ではカバーできない担保権として実務上広く用いられている担保権です。

icon-hand-o-up 例えば、映像制作会社を経営するAさんが、事業資金を得たいと考えたところ、映像テープの編集機材以外にめぼしい財産がなかったとします。
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icon-arrow-circle-right しかし、このような編集機材には、登記や登録の制度がありませんから、これらに抵当権を設定することができません。

一方で、これらの編集機材に質権を設定した場合には、編集機材を質権者に引き渡さなければならないため、そもそも映像制作という事業の継続ができなくなってしまいます。

譲渡担保は、これらの不都合を避けて、合理的にお金の借り入れをすることができるような工夫がなされています。

icon-arrow-circle-right まず、Aさんは、この編集機材を、B社に売ったことにして、その売買代金を受け取るわけです。Aさんが一定期間の間に、この代金に相当するお金を返せば、編集機材は、再びAさんの手元に戻ってくるし、返せなければそれまで…というのがこの譲渡担保という仕組みです。

Aさんの受け取った代金が、事実上の事業のための融資であり、Aさんが売った編集機材を、B社に代理して管理するという方法をとることで、Aさんは引き続き編集機材を使用して事業を継続することができますし、事業資金も手に入れることができるわけです。

譲渡担保は、このような動産だけでなく、不動産にも設定することができます。この意味では、前回説明した仮登記担保に似たところがありますが、譲渡担保の場合には、不動産の所有権を、買主のもとに移してしまいますから、後日、本登記に改める必要がないことになります。

また、ある場所に保管されている物を、種類と数量を定めて、一括して譲渡担保とすることもできます。この意味では、第27回「契約による担保権(15)…根抵当」で説明した根抵当に近い性格を持っているといえるかも知れません。

icon-hand-o-up 実は、譲渡担保には、これを規律する法律が制定されていません。しかし、裁判では、譲渡担保も有効な担保権であることは確認されており、裁判例の積み重ねによって、さまざまな場面で用いられるようになりました。

また、譲渡担保もほかの担保権と同様、お金を返して譲渡担保を設定した物を取り戻す「受戻(うけもどし)」や、差額の清算などが認められており、譲渡担保を設定した当事者の利益を公平に図る仕組みが確立されつつあります。

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