その他の担保権(1)…所有権留保

既に説明してきたとおり、法律に定めのある担保権には、留置権と先取特権という法定担保物権と、質権、そして抵当権という約定担保物権とがあります。

icon-hand-o-up これらの担保権は、それぞれの制度目的に応じて使い分けられるのですが、それぞれに一長一短があります。

例えば、質権の場合には、その物を質権者に引き渡さなければならなかったり、抵当権が、原則として不動産にしか設定できなかったりするため、法律で定めるこれらの担保権以外の担保の方法がいろいろと考えだされてきました。

その一つに、「所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)」というものがあります。所有権留保というのは、物を買った場合に、その代金を完全に支払い終わるまで、物を売った人のもとにその所有権を留め置くことをいいます。

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例えば、AさんがBディーラーから、一台200万円の自動車を、返済は1か月10万円、20か月の分割払いで買いました。

icon-arrow-right このとき、もし、通常の分割払いの契約だったとすると、法律上は、自動車の持ち主はAさんとなります。

そして、自動車の販売代金である200万円は、担保の付いていない貸金と同じ扱いとなってしまいますから、Aさんがこの代金を踏み倒したとしても、Bディーラーは、自動車を取り返すことができません。

しかし、Bディーラーが、所有権留保によって自動車を売った場合は、自動車の持ち主はBディーラーのままですから、Aさんが代金を支払わないのであれば、Bディーラーは、Aさんに売ったその自動車を取り戻すことができるのです。

この場合には、法律上は、自動車の売買契約を解除して、AさんからBディーラーに自動車を戻す代わりに、BディーラーからAさんに代金を返済するという方法で契約関係を解消することになります。

ですから、原則として、所有権留保に基づいて、Bディーラーが自動車を取り戻すには、売買代金である200万円をAさんに返すことが前提となります。

icon-arrow-right しかし、Aさんが、自動車を使用する期間が長いほどその価格は下がっていきますし、自動車の販売代金には利息が付くのが通常ですから、こうした金額を差し引くと、BディーラーはAさんにお金を返さなくても、自動車を取り戻すことができる場合もあります。

なお、「自動車を取り戻す」と言っても、Bディーラーは、Aさんのもとにある自動車を勝手に持ち帰ることは、Aさんが任意に協力しない限り、許されていません。Aさんの協力が得られないときには、裁判所に申し立てて、裁判所の執行手続によるべきです。

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