お金をめぐる事件(その2)-誤って振り込まれたお金で返済

前回は、他人から騙し取ったお金で返済した場合の問題を取り上げましたが、今回は、誤って振り込まれたお金を借入金の返済に充てた場合の問題を取り上げます。

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icon-angle-double-right 会社の資金繰りに困っていたBさんは、ある日、通帳に、心当たりのない1000万円ものお金が振り込まれているのに気づきました。Bさんの経営する会社は、「株式会社B商店」といって、X銀行Y支店に口座を開設しており、口座番号が「1234567」です。

実は、この1000万円を振り込んだのは、Aさんでした。Aさんは、「株式会社B商事」から1000万円の商品を仕入れており、その代金を誤って振り込んでしまったのです。「株式会社B商事」は、「株式会社B商店」と同じX銀行Y支店に取引口座を開設しており、口座番号は「1234576」でした。

icon-arrow-right Bさんは、この1000万円を、Bさんに1000万円融資をしているCさんへの返済に充てました。さて、誤って株式会社B商店に1000万円を振り込んだことに気付いたAさんは、どうすればよいのでしょうか。

前回紹介した事例では、Aさんは、Cさんに対して、Bさんから返済されたお金をAさんに戻すよう命じるものでした。

ところが、お金が誤って振り込まれた場合(これを、法律上、「誤振込による弁済」と呼んでいます)には、裁判所は異なる判断をしているのです(モデルとなった判例:最判平成8年4月26日民集50巻5号1267頁)。

この例のモデルとなった裁判で、裁判所は、Aさんから誤って振り込まれたお金は、BさんがX銀行に預けたお金になるので、Bさんがこのお金を引き出してCさんへの借入金の返済に充てた場合であっても、AさんはCさんに対して、何も主張できないと述べました。

今回、Bさんが受け取ったお金は、だまし取られたものであっても、誤って振り込まれたものであっても、Bさんにとっては受け取る理由のないお金のはずです。

それにもかかわらず、だまし取られたお金の場合と、誤って振り込まれたお金の場合とで裁判所の判断が分かれたのは、お金を返してほしいAさんにとって、Bさんに支払能力があるのかどうかが関心ごとであるためだと思われます。

前回の事例でBさんがお金をだまし取ったのは、Bさんが十分なお金を準備できないことが理由でした。ですから、AさんがBさんにお金を返してほしいと求めても、Bさんがそのお金を返すことは不可能なのです。

 icon-arrow-circle-right しかし、誤った振込の場合には、そのような事情が必ずしも存在しないという判断があるのではないでしょうか。

いずれにしても、Bさんのもとには受け取る理由のないお金が支払われており、Aさんは、Bさんに対しては、自らがBさんに支払ったお金の返還を求めることができることになります。

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